■第18回電撃小説大賞・大賞「エスケヱプ・スピヰド」
2012年2月10日、電撃文庫より第18回電撃小説大賞の受賞作「エスケヱプ・スピヰド」(原作・九岡 望、イラスト・吟)が発売となった。
(参考:
第18回電撃小説大賞・大賞「エスケヱプ・スピヰド」が2月10日に発売!)
image from
Amazon昭和一○一年夏。極東の島国《八洲(やしま)》は、二十年前の戦争で壊滅状態にあった。廃墟の町《尽天(じんてん)》では、シェルターの冷凍睡眠から目覚めた人々が、暴走した戦闘機械の脅威にさらされながら生きていた。
尽天で目覚めた少女・叶葉(かなは)はある日、戦闘兵器から逃れる最中、棺で眠る奇妙な少年と、一匹の巨大な《蜂》に出会う。命令が無いと動くことができないという少年に、叶葉は自分を助けるよう頼む。それは、少女と少年が“主従関係の契約”を結んだ瞬間だった──。
少年の名は、金翅(きんし)の九曜(くよう)。《蜂》と少年は、《鬼虫(きちゅう)》と呼ばれる、八洲軍が技術を結集して製造した超高性能戦略兵器であった。叶葉を暫定司令官と認め、共に戦い、彼女を守ることを誓う九曜。しかし、兵器であるがゆえに、彼には人の感情が存在しなかった。叶葉はそんな九曜を一人の人間として扱い、交流していく。
徐々に心を持ち始める九曜だったが、平穏な日々は、九曜と同じ鬼虫である《蜻蛉》四天(してん)の竜胆(りんどう)の飛来によって打ち砕かれ──!?
閉じられた町を舞台に、兵器の少年と人間の少女の出会いを描くノンストップ・アクション!
■「覚悟のすすめ」「エクゾスカル零」と似た設定が色々
物語は戦争の荒廃によって廃墟と化した街・尽天が舞台。元々は人間であるが兵器ととして改造され、「鬼虫」とういう頭脳をもった兵器と一体となって戦う少年・九曜と少女・叶葉を中心として描かれたものだ。
鬼虫の中でも最強といわれる「蜻蛉」によって閉鎖されてしまっている尽天からの脱出、九曜の復讐といったものがテーマとなる。
吉川栄治のいった娯楽小説の要素「かたき討ち」と「宝さがし」的なものをきっちり抑えている。
アクションシーンはそれなりにしっかり書かれているし、物語の構成もシンプルであって読みやすく、さすがに「大賞」である。
ある漫画を読んでいないならば、十分面白い。
問題は山口貴由氏の「
覚悟のすすめ」、「
エクゾスカル零」を読んだことある人が読んでしまうと似たような設定、九曜の軍人的セリフ回しが気になって仕方なくなってしまうことだろう。
この「
鬼虫」の設定が山口貴由氏の「
覚悟のすすめ」に登場した「強化外骨格」によく似ている。英霊の魂の代わりに電子頭脳が搭載されているわけだが。
他にも、鬼虫の「蜂」に搭乗(?)している九曜(くよう)という少年のセリフ回しも「覚悟のすすめ」の影響かと思うし、廃墟の街とコールドスリープと言う設定は「
エクゾスカル零」だなと思う。
image from
Amazonただ、パクリというレベルではなく影響を受けている作品が透けて見えてくるくらいの話である。それが気になりだすと物語に没頭できなくなるのは、個人的な悪い癖なので、他の人は問題ないかもしれない。
完全なオリジナルなどこの世に存在しないし、どこかで見たことある程度の「受けの要素」が無ければ娯楽として成立しない。そんなことは分かっているのだが、どうにも悪い癖で困ったものである。
八洲(やしま)という日本ではなく仮の国を設定するのは、現実をバックした場合の考証に自信が無いときには上手い手法だと感心した。
「特務少尉」と言う呼び方は海軍の物で、階級に「殿」を付けるのは陸軍の習慣だというツッコミを受けないで済む。日本じゃないんだから。
【
naka773】

電撃文庫&電撃文庫MAGAZINE
http://dengekibunko.dengeki.com/